「幻影城」関連書籍には予告されていながら、刊行されずに終わった作品があります。そのうちいくつかは廃刊後、他の出版社から出版されましたが、大部分は埋もれてしまいましたが、「幻影城ミステリ」のように、昭和50年から長らく予告されていましたが、ついに刊行されることがなかった叢書もありました。
雑誌「ブラックホール」は昭和53年4月に発行が予定されていた小説・読み物専門誌です。当時、「幻影城」の読者層は大きくふたつにわかれていました。ひとつは古い作品の再録や作家論、研究・評論といった「幻影城」創刊当時からの編集方針を支持する層。もうひとつは幻影城新人賞作家が活躍するに従って増えてきた読者で、もっと肩の凝らない小説や読み物を望む層。
そこで、「幻影城」は第44号より、年四回発行の季刊誌に移行し、作品再録、作家論、評論・研究を強化、書き下ろし小説は問題提起となるような作品を中心に編集され、新たに小説・読み物誌「ブラックホール」を創刊、従来の探偵小説にこだわらず、ブラックホールのようになにもかも包括してしまうような雑誌をつくる予定でした。いわば「ブラックホール」は戦前に発行されていた「新青年」のような雑誌を目指していたのです。
ところが、結果的には「ブラックホール」は発行されずに終わりました。「ブラックホール」用に立てられていたいた企画は「幻影城」本誌(主にNo.44,45)に吸収されました。このころは「幻影城」の寿命も尽きかけており、営業上の理由があったのかもしれません。
紀田順一郎著 A5判上製本 定価1300円 1978年11月5日刊予定 <幻影城>で連載された「幻影館」12篇に書下し「月世界旅行」と「ファントマ」2篇を収録。連載中、その単行本化が待たれた紀田順一郎の労作愈々刊行。
●主な内容 月世界旅行/ファントマ/ゴーレム/カリガリ博士/狂える悪魔/霊魂の不滅/フォーゲレート城/ノスフェラテュ/ロストワールド/オペラの怪人/メトロポリス/下宿人/猫とカナリア/スピオーネ
ミステリ・冒険小説・SF・ファンタジー・コミック・イラスト誌
ブラックホール創刊号予告目次リスト
| 短期連載第一回 | 湖底のまつり(100枚) | 泡坂妻夫 |
| 巻頭特集=日本のSFの系譜 | SFランドへようこそ | 栗本薫 |
| 多彩なSFファンダム | 柴野拓美 | |
| 日本のSFベスト10 | 石川喬司・山野浩一・山本明 | |
| 私とSF | 尾崎秀樹・他 | |
| SFマガジン&奇想天外編集長インタビュー | 谷口高夫 | |
| ネオ・ロマン特集 | 魔女は赤い爪をもつ-推理小説- | 筑波孔一郎 |
| 妖魔山大探検-冒険小説- | 高村信太郎 | |
| 海賊船ロシナンテ号-SF- | 李家豊 | |
| 連作 short short | 23世紀のポップス | -期待の大型女流新人-京堂司 |
| イラストへの招待 | カラー8頁=村上芳正の華麗な世界 | 村上芳正 |
| 32頁一挙掲載=-キリエ-宝島 | 横山隆一 | |
| コレクター紹介 | 映画フィルムコレクション | 紀田順一郎 |
| TVミステリーグラフティ | アメリカの影 | 麻田実 |
幻影城ミステリ予告リスト
頁数の後には再録元を記載しました。
発表名義が異なる場合は、誌名の後の( )内に記載しました。
装丁はB6判丸背上製本が予定されていた。
| 赤い密室-星影龍三登場- | 赤い密室 | 鮎川哲也 | 探偵実話(中川透) | 1954年(昭29)9月号 |
| 消えた奇術師 | 講談倶楽部 | 1956年(昭31)11月号 | ||
| 白い密室 | 宝石 | 1958年(昭33)4月号 | ||
| 道化師の檻 | 宝石 | 1958年(昭33)5月号 | ||
| 薔薇荘殺人事件 | 宝石 | 1958年(昭33)8月号 | ||
| 悪魔はここに | 宝石 | 1959年(昭34)1月号 | ||
| 青い密室 | 宝石 | 1961年(昭36)5月号 | ||
| 砂とくらげと | 宝石 | 1961年(昭36)10月号 | ||
| ひなの首-雄太郎・悦子登場- | ひなの首 | 仁木悦子 | 別冊小説宝石 | 1972年(昭47)4月号 |
| 黄色い花 | 宝石 | 1957年(昭32)7月号 | ||
| 灰色の手袋 | 宝石 | 1958年(昭33)4月号 | ||
| 弾丸は飛び出した | 宝石 | 1958年(昭33)5月号 | ||
| 赤い痕 | 宝石 | 1958年(昭33)7月号 | ||
| 暗い日曜日 | 宝石 | 1962年(昭37)12月号 | ||
| 初秋の死 | 推理界 | 1969年(昭44)11月号 | ||
| ただ一つの物語 | 小説サンデー毎日 | 1971年(昭46)12月号 | ||
| 赤い真珠 | 小説サンデー毎日 | 1971年(昭46)5月号 | ||
| 木がらしと笛 | 推理 | 1972年(昭47)2月号 | ||
| 枯野-春日検事の良心- | 枯野 | 日影丈吉 | 宝石 | 1956年(昭31)3月号 |
| 善の決算 | 小説公園 | 1956年(昭31)7月号 | ||
| 眠り草は何を夢みる | 別冊クイーン・マガジン | 1960年(昭35)冬号(1月号) | ||
| 借りた顔 | 推理界 | 1967年(昭42)10月号 | ||
| 歩く木 | 推理ストーリー | 1968年(昭43)5月号 | ||
| 戯れに死は選ぶまじ | 推理界 | 1969年(昭44)4月号 | ||
| 多すぎる証人-信一少年シリーズ- | 多すぎる証人 | 天藤真 | 幻影城 | 1976年(昭51)1月号 |
| 宙を飛ぶ死 | 幻影城 | 1976年(昭51)2月号 | ||
| 出口のない街 | 幻影城 | 1976年(昭51)3月号 | ||
| 見えない白い手 | 幻影城 | 1976年(昭51)4月号 | ||
| 完全な不在 | 幻影城 | 1976年(昭51)5月号-6月号 |
「ベイラの獅子像」橘外男(1975年3月号(No.2))
「幽魂賦」橘外男(1975年8月号(No.8))
「死境アフリカ」橘外男(1975年11月号(No.11))
「美しき山猫」香山滋(1975年3月号(No.2))
「水色の目の女」地味井平造(1975年5月号(No.4))
「湖の畔」三橋一夫(1975年5月号(No.4))
「具足一領」横溝正史(1975年7月号(No.6))
「妻のこと」江戸川乱歩(1975年7月増刊号(No.7))
「旅順海戦館」江戸川乱歩(1975年7月増刊号(No.7))
「私の十代」江戸川乱歩(1975年7月増刊号(No.7))
「活字と密約」江戸川乱歩(1975年7月増刊号(No.7))
「処女作」江戸川乱歩(1975年7月増刊号(No.7))
「三十代のころ」江戸川乱歩(1975年7月増刊号(No.7))
「放浪記」江戸川乱歩(1975年7月増刊号(No.7))
「蒐集癖」江戸川乱歩(1975年7月増刊号(No.7))
「私の本棚」江戸川乱歩(1975年7月増刊号(No.7))
「集書」江戸川乱歩(1975年7月増刊号(No.7))
「狐霊」赤沼三郎(1975年8月号(No.8))
「白鯱模様印度更紗」星野青人=久生十蘭(1975年11月号(No.11))
「弘化花暦」谷川早=久生十蘭(1975年11月号(No.11))
「千早館の迷路」海野十三(1975年12月号(No.12))
「慈善家名簿」葛山二郎(1976年2月号(No.14))
「下駄」岡戸武平(1976年3月号(No.15))
「鼻」吉野賛十(1976年9月号(No.21))
そのほか正式な予告とは別に「渦潮」藤雪夫、
「鯉沼家の惨劇」宮野村子の長編掲載が触れられていた。